ギャップ
僕らは基本的に"ギャップ"が大好きです。見た目かなり暗そうだけど、話すとものすごいハイレベルなギャグを言う人とか、いかにもマズそうな構えなのに、実は猛烈にウマいとんかつ屋とか、人が気づいてないのに自分だけ気づいている状況とか。東京R不動産はそういうギャップを見つけるということが根底にあります。
不動産を買うにせよ借りるにせよ、単に「今どこが穴場ですか?」と聞くのはナンセンス。今どき穴場情報があったとしてもすぐに伝わって、むしろ必要以上に高くなったりするものです。
重要なのは「自分にとっての穴場とは何か?自分にとって価値あるギャップは何か?」という視点です。例えば僕らはデザイナーズ物件と呼ばれるものが嫌いなわけではないものの、不動産屋がこぞって「おシャレな物件ですよ」と言うような物件はむしろ割高な場合も多く、僕らや僕らのお客さんにとって必ずしも穴場的ではありません。僕自身は家が古いことは比較的気にならないのですが、一般的には新しい方が嬉しいという人が多いため、古いマンションの方が自分にとって「割安」な物件が多くなります。歩くのが好きな人や、いつも自転車で動く人にとっては、駅から遠い場所の方がコストパフォーマンスや満足度は上がります。人と自分のニーズギャップこそ、自分にとっての「穴場」になるのです。
事業主にとっての意味
これを"事業をする"立場から見るとどういうことになるか?それは、
「自分だけが知っているニーズがある」あるいは「自分の得意技を使えるところで勝負する」
ということです。普通はそこにチャンスを見ないのに、自分にはチャンスが見える。そんな時、ギャップをとる(=ギャップから価値を生む)ことができるのです。
権利交渉に長けた不動産屋は厄介物件にこそ好んで投資します。古くて味のある物件の活かし方とそれを好む人たちを知っている僕らは、そういう物件に投資すべきでしょう(勇気がないのでまだ投資してませんが・・)。また、大きなビルの売買で大儲けしたかつての外資ファンドなどは日本人の知らない金融的ツボを知っていたし、世界のお金の流れを見ていること自体がギャップをとっていくための"得意技"だったわけです。そして、新しい価値を提供すること、つまり"求められているけれどまだ他にないもの"をつくり出すことも、ニーズと供給のギャップを埋めることであり、うまくいけば高い利益を生みます(もちろん、そもそも存在しないニーズでしたということだと、単なる勘違いになってしまいますが・・)。
得意技で勝負する
正直なところ僕らが色々な事業のお手伝いをする中で、確信的にギャップを感じるチャンスはどこにでもあるわけではありません。僕らが得意とすることは、ある程度"感性"で物を選ぶ人たちの分野です。家なんて安ければいい、事務所は駅から近くて立派ならいい、というニーズはもちろんあるわけですが、僕らはそこでは勝負できません。だから駅前の居酒屋ビルなどは、飲みには行っても事業として取り組むのは苦手です。逆に得意な領域に関しては、半歩先がイメージできるため機会は広がるし、うまくいく確率も高くなります。
オーナーさん・投資家さんにとって"得意なポイント"というのは大抵、何かあるのではないでしょうか。それはある場所の歴史を見てきた肌感覚のようなものかもしれないし、経済トレンドの捉え方や融資の引っ張り方かもしれません。はたまた最近知り合った良い内装屋さんとの出会いがそれなのかもしれませんし、あえて自ら宣伝するならば(!)「東京R不動産」を知っている投資家さんは、これを上手く活用できるような物件を持つことが勝ちパターンになるかもしれないのです。また、既に不動産を持っているならば、その場所の特有のニーズについて何か気づいているはずですし、新しいことを少し勉強すればそれは確実に自分にとって価値あるギャップになっていきます。
新たに物件を買うにせよ持っているものをリノベーションするにせよ「何もないからとりあえず大手に頼もう」というのはツマラナイですし、「何でもいいから知り合いに頼んどけ」というのも考えものです。一方、最近ペット可マンションが人気らしいとか、建築家のデザインしたオフィスがいいらしいと聞いただけで、"ニーズのツボ"を理解せずにやるのはとてもコワいことであり、これこそがいわゆる"やっちゃった物件"ができるパターンでもあります。
目指せインサイダー
幸い不動産ではインサイダー取引は禁じられていません。知り合いのオーナーさんから借りるのも、前から内情を知っているマンションに投資するのも、自分だけが知っているニーズに合った物件をつくるのも、基本的には人に迷惑をかけるものではないからです。むしろインサイダーでないものにお金を投じるのは危険でもあります。知らないことをやってしまって誰も望まないような建物ができてしまうことは社会の損失ですらあります。
だから、積極的にインサイダーになるべきなのです。そしてこの「自分の持つギャップ」が、不動産の本質である「その場所の持つギャップ(これについてはまた今度)」と融合したときにこそ、皆がハッピーになるストーリーが生まれるのです。