抑えて、光る

2021年に建築家の手によってスケルトンからのフルリノベーションが施されたこの空間。

空間の主役となるのは、豊富な収納力と使いやすい導線で設計された、料理好きにとって理想的なキッチン。バイブレーション仕上げが施されたステンレス面材と背面タイルはともに光沢を抑え、凛とした佇まい。

厚みを抑えた人工大理石のキッチン天板で横のライン、TIME&STYLEによる造作家具のオーク材の木目とバーチカルブラインドで縦のラインと、細部まで端正に作り込まれた美しさがあります。

壁にさりげなく取り付けられたNEW LIGHT POTTERYの照明は、ガラス建具越しにリビングへと届き、現在はピアノ室として使われているフリースペース全体をまるで照明器具のように照らします。

洗面台は、ミラーの背後に隠された照明やデザインのいい水栓によりホテルライクな印象があります。こうした随所に垣間見える建築家ならではの仕事には、感嘆のため息が出ます。

約23畳のLDKは、3枚の窓の手前がそれぞれキッチン、ダイニング、リビングという形でレイアウトしやすい形をしています。

各部屋にクローゼットを備えた3つの個室と、ガラス建具で仕切られたフリースペース、その先にファミリークローゼットと、100㎡近い空間だけあり、間取りにゆとりが感じられます。

1階ですが、窓先の敷地内の植栽とすべての引き違い窓に取り付けられた二重サッシにより、人の視線や交通音を感じることなく落ち着いて生活ができます。

華美な装飾や奇をてらうような間取りではなく、むしろデザインを抑制し、光やラインをていねいにコントロールすることにより生まれた、良質な住宅、という印象を持ちました。

周辺は、ライフやサミット、成城石井などのスーパーが揃い、砧公園までは自転車で10分弱。保育園も多く、子育てがしやすい環境です。サイズや頭数の制限はありますが、ペットを飼えるのも、この年代のマンションでは貴重です。

妥協することなく、細部までこだわり抜いて作られた空間のよさに共感をしてくださる方に引き継いでいただけたら。