今回は少し"引いた"目で不動産を眺めてみたいと思います。
東京あるいは日本の住宅は画一的で多様性がないという話を聞くことが時々あります。
僕はあまりそうは思っていません。きれいなマンションもメーカーハウスも、木賃アパートもあれば、建築家のつくる家や集合住宅もけっこうあったりします。むしろヨーロッパの都市にいけば、都市は同じ質感のアパルトマンとタウンハウス、郊外にいけば割と似た形式の戸建ばかりだったりするわけで。
つまり日本の住宅は、一つ一つが安易にできている、あるいはスタンダードの質が低いということではないでしょうか。定番、あるいは標準的な形式といったものが、様々な都合・構造によって味気なくなり、それがまかり通るようになった歴史があり、そしてそれに対する疑問がようやく大きくなってきたのが、今です。
「東京R不動産」は、世の中の定番的な物件を紹介しているサイトではありません。でも決して"変わりもの物件万歳!"というコンセプトなわけではないし「定番」を否定しているわけでもありません。物件にしても、その探し方にしても「供給者視点で安易にできあがった標準」のようなあり方に満足していないということ、そして同じく不満を持っている人たちのための情報を提供することの価値を追求しようとしています。
物件づくりに関わると必ずといっていいほど"差別化"という言葉を聞きます。商品として他に勝たなければいけないのはもちろんですし、そうして差別化の積み重ねで世の中は進化していくものです。ただ、人が求めているのは単なる強い特徴ではありません。この数年、キャラクターの強い新築物件も、いい意味で、増えました。僕らは"本質的に良い特徴""をもった物件を見つけ出していくことに引き続き力を注ぎつつ、同時に新しい定番のあり方についても真剣に考えたいと思っています。
それは「なんか新しい方法ないかな?」「どうしたらもっとカッコよくなるだろう」ということよりも、むしろ「どうしたらもっと気持ちいいだろう?」「みんなでつくった手料理のように"安くても幸せ"なものってどういうことだろう?」といったことから生まれてくるような気がします。このへんは建築家の皆さんにも期待するところです。そして同時に進めるべきは、物件と人のマッチングにおけるロス(その物件、好きな人いるのに…)をなくすこと、建物と内装のマッチングにおけるロス(あぁ、もったいない!)をなくすこと、土地と建物のマッチングにおけるロス(ソコにソレは、ないです…)をなくすこと。
これらがつながってくれば、だいぶ、よくなるはずです。そしてそのためには、物件だけでなくマッチングのあり方においても、いくつかの新しい定番的手法が確立されていくことも重要です。
このあたりが、我々がオーナーさんと一緒に解いていくべきこれからの大きなテーマだと思っています。