08|“デザイナーズ”の行方林 厚見(東京R不動産/SPEAC inc.) カッコいい物件は価値が高い? デザインのカッコいい不動産は人気が出てすぐ空室待ちになるの?家賃も高くなるの?将来性も高いの?…これは賃貸不動産を建てる施主の立場からすればやっぱり気になるテーマだと思います。もちろんここでいう価値とは建築の芸術的価値ではなくて経済価値・資産価値の話です。何が"カッコいい"かの議論はラチがあかないのでとりあえず「いい感じにデザインされている」ものということにしてお話しましょう。 デザインプレミアム 事業者としては、"クリエイティビティがセオリーを超える"ことを狙うのが一番おもしろいのは言うまでもありません。そしてそれは往々にして可能であり、僕らは物件をつくったりイジったりするとき、常にそれを追求します。ただ、奇跡のようなマジックはいつでも簡単には起こるわけではありません。本当にダメダメな立地やボロダメ物件の改装であれば大きな逆転シナリオが立てやすいですが、便利な立地での一人暮らしの新築住宅では、"デザイン"で上げられる付加価値は、頑張っても10~15%までと思って計画すべきでしょう。誰が見ても悪くない立地と敷地の場合、限られた一部の人に向けた"嗜好品"よりも"質の高いスタンダード"を追求するスタンスが大抵はうまくいくものです。そして嗜好品は増えすぎるとやがて余ります。だから「この場所はひたすら安く、ひたすら万人に受け入れられるものをつくる方が事業性は上がります」という場所も、残念ながら結構あるんです。 デザイナーズ物件 デザイナーズという言葉は今でもたくさん使われています。最近では「打ち放し"風"壁紙のデザイナーズ物件!」といった倒れそうなフレーズまで登場しています。まあ所詮はプロモーション用語だと思えばよいのでしょうが、その共通イメージがかなり広く認識されているために、東京R不動産でも悩んだ末にこのビミョウな言葉をあえて検索アイコンに使っています。かつて80年代頃にはデザイナーズブランドとか、90年代頃にはデザイナーズレストランとか、そしてその後はデザイナーズマンションといった具合に、衣食住が見事に悩ましいフレーズを引き継いできました。服や飲食店は今はだいぶ個々の本質価値やコストパフォーマンスがより意味を持つようになっているようですが、住宅においてはもうちょいというところでしょうか。すべての建物・物件は本来的な意味で「デザイン」されているべきだと考えれば、この言葉が自然に消えること、そしてR不動産からデザイナーズアイコンが消えるべき時を僕らは待っているわけですが、そろそろその日は近づいてきたと思っています。 オーナーさんへ 狙いの方向性が"嗜好品"であれ"スタンダード"であれ、基本を押さえつつ、使う側の立場に立って新しいアイディアを形にすることこそ、最後に皆をハッピーにします。 |
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