僕らの周りでは最近、鎌倉や房総など郊外に引っ越す人が徐々に増えています。上の世代の田舎暮らし志向と並行して、若い人たちのこうした志向も進んでいるようです。
では今、東京の人口は増えているのか、ご存じでしょうか?答はYES。増えています。全体としては、東京集中が今も進んでいるんです。
世の中は作用と反作用が同時に動いていて、一方向には動いていません。ハイテクが進めばその逆がもてはやされたり、世の中がグローバルに向かう一方でローカルが熱かったり。不景気でも逆に元気なところが必ず出てきます。古い建物のリノベーションに興味を持つ人が増えるのも、そういう構造の中にあります。
ただ、日本全体の人口はご存じの通り、2005年からもう減り始めています。予測では、東京集中度が上がりながらも2015年には東京の人口も減少に転じると言われています。つまり、全体としては家は余ってくるでしょう。一般論としては日本で不動産という資産にお金を投じるのは、基本的に不安なわけです。
でもそこでみんなが止まってしまうべきかというと、そうではありません。仮に日本が全体として衰退しても、その中のある都市は繁栄するし、その都市の中には又、人が集まる街角と、誰も来ない街角があるわけです。表があれば裏を見る、裏が見ながら表を読む。総じてマイナスに見える状況を見ても、3割のプラスと7割のマイナスを見抜く。住宅がどこかで余っても、どこかで足りず、あるいは人気を博す住宅やオフィスがある。
そして、住み手使い手の感覚の進化は"ゆっくりと"進んでいます。安さの追求もさらに進むでしょうが、その中で、モノの魅力を敏感に感じ取る人は、増えています。僕らの想像を超えるヘンなことを考える人も、次から次へと出てきます。まだまだ不動産づくりのおもしろさはこれからが本番です。
不動産オーナーにとって、物件のおもしろさ・個性はプラスなのか?とよく言われます。僕は、YESと言ってきたつもりです。ただ、瞬間風速ではマズいし、使う人に対するリアルな「思い」がないとマズいのだと。今でも魅力を放っている物件は、よく考えられているし、心がこもっています。しっかりした事業計画と「魂」がある物件が、オーナーを、世の中を、幸せにします。
「東京R不動産ビジネスレビュー」は今回にて一区切りとなります。
お読みいただいた方、ありがとうございました。
最後に、ここまでの話を、楽しくうまくいく不動産づくりの10カ条でまとめておきたいと思います。
1.得意技で攻めよう
~自分が人より得意な、人より知っている、人よりイメージできる、場所・ニーズ・情報。
2."いい感じ"にご注意
~キャッチーな物件と、決まる物件は別モノ。決まるものをつくって、キャッチーに見せよう。
4.不動産屋の話は先に聞く
~夢のない話でも重大な真実はある。押えるとこ押さえた上で、逆転を狙う。
3.半歩先と、普遍性
~チャレンジせども、基本は外さず。
5.おしゃれより、気持ちいい
~おしゃれは時代に流される。気持ちいいは普遍である。
6.まずは、高感度・少投資
~大抵の中古物件は、プチリノベがよい。小さい投資で変身するポイントを絞ること。
7.ひとつならトコトンやる。
~部屋がたくさんあるなら、一つくらいは思い切っておもしろいことしましょう。(たくさんやると苦労します)
8.ストーリーをイメージする
~誰に"刺さる"のか、その人がそれをどう知り、彼はそれを他とどう比較して選ぶのか。
9.20年先をイメージする
~音楽や映画は記憶に残る。不動産は現実にそこに残り続ける。
10.幸せな不動産
~不動産は大事な資産。慎重に。
でも、経済比較よりつくりたいようにつくることが、オーナーの幸せということも、ある。