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2009.2.23

11|変わりモノ物件の良し悪し

林 厚見(東京R不動産/SPEAC inc.)
 

東京R不動産では時々「普通の人には厳しいですよねぇ」とか「不動産屋には渋い顔されるんです」という物件を紹介して大人気を巻き起こすようなことがあります。また時には「この物件おもしろい!いけるね!」と思ったら全然決まらない。。ということもありました。今回はそんな事例を見ながら、変わりもの物件、マニア物件の"いける・いけない"のラインはどういうところにあるのかを探ってみましょう。

<事例1~超人気ボロ家>

半蔵門線住吉、50㎡で8.5万は確かに安いけど、和室中心で写真以上にとにかくボロい。風呂場も床が抜けていて水が外に流れ出ちゃうという有様なので風呂なし扱いで募集。トイレは当然和式、チェーン引っ張る式、タンクは木製。でも庭や縁側があっていい感じ。結局サイト掲載後1週間後の内覧会には20人、即決3人申込み。現在ウェイティングリストには360件。内装関係の方が入居したため、今はかなりいい感じに改装されていて、次の募集はさらに人気になりそうです。この雰囲気とこの賃料(広さに対し)が重なれば、設備や古さは多少は我慢できてしまうという事例。ただしこの設備にして内装が中途半端に安新しいと全然ダメですし、家賃が2割高くなると、内見者はぐっと減るでしょう。

<事例2~ミニ倉庫>

「町外れの倉庫→手ごろなアトリエ」というパターン。恵比寿徒歩15分、白金台12分。住宅街の裏路地にある住宅の1階部分。結構寒そうだし、水周りはかなりハードコア。借り手がいなくて長いこと空いていたらしいですが、天井を抜いて白く塗ってみました。このくらいの値段帯ならば、探している人の母数が多いので、設備は相当古いのに空室にならない物件です。しかしこのノリで浜松町あたりだとアトリエニーズはだいぶ厳しくなるし、駒込あたりだとほぼ無理。全ては立地とバランスなのです。

<事例3~改装の夢>

「リノベーションしたい!」と思う人もだいぶ増えました。この神宮前の物件は、改装自由、勝手にどうぞ!というコンセプトで、元の入居者が退去したまま募集されました。改装費用がかかるので賃料も抑えめ。しかし。問い合わせは恐ろしいほど来るのに入居が決まらない。。やはり賃貸住宅で改装費用をかけられる人は少ないのです。壁をちょっといじっても数十万、床までやったらすぐ100万、となってくると、何年住むかわからない賃貸ではハードなことです。こういう方法では「現状」と「改装コスト」によって方針をうまく見極めないといけません。

<事例4~カッコいいけど…>

スタイリッシュなこの物件、元々スタジオだった建物がうまく住宅に転用されていました。最終的にカメラマンが入居しました。が、基本的には住宅でないとダメという物件だったので、そうなるとさすがにこの賃料レベルで借りる人の母数はかなり少なく、またこの空間に合うライフスタイルの人はそれほどいるものではありません。いい出会いを得る確率はかなり低くなってしまうのが悩ましい。

<事例5~古ビルの変身>

ある意味これはとても東京R不動産的な物件。馬喰町、築約50年、以前は空室だらけの古ビルでした。弊社メンバーMがこのビルの雰囲気に惚れ込み宣伝すること数か月。ポツリポツリと空室が埋まり始めたのです。気づいたら現代アートの有名ギャラリーや、大人気ジュエリーショップのサロン、北欧雑貨店、おいしい食堂、美術大学の施設…。一体これは何なのか?微妙な、わかる人にはわかる、味、雰囲気。多分オーナーさんもその魅力が何なのかわからないのかもしれません。そういう物件って、あるのです。

<事例6~この空気>

目黒区駒場43万円。かつては芸能人も住んでいた120平米の住宅物件。外国人向けの不動産屋さんにしてみると「ちょっと古い感じだからねえ…」と何か月も空室だったそう。クリエーター向けに事務所で募集すると、過去3部屋とも即決しました。"いい感じにレトロな空気感"の手頃なサイズのニーズが、この場所にはキッチリ、ありました。そしてこの建物の絶妙な具合を保ってきたのもオーナーさんのセンスなのだと思います。


こうして見てみると、その物件の"本当の"ニーズ、それを呼びよせる方法が見えているかどうかで本当に大きな差が出てくることはわかっていただけるかと思います。

ここでは東京R不動産なりの得意パターンがいくつか入っていますが、逆に僕らはあまり得意でなくて、地元の駅前店の方がうまくいくという物件ももちろんありますし、むしろ大逆転できるケースは決して多くはありません。変わりもの物件や渋い物件を正しく評価するのは確かに難しいものです。でも、今入っている入居者、かつていた人たち、あるいは前を通りかかってふと建物を見上げている人たちの目の中に、何かヒントが隠されているかも、しれません。

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このブログについて

世の中にもっと魅力的な物件を増やしたい。不動産を持つ人・つくる人が、住む人・使う人と一緒に幸せになるにはどうしたらいいだろう?そんなことを考えつつ、感性とアイディアにあふれるお客さまたちから日々ヒントを得ながら不動産事業や投資・経済のことを考えてみる。

「東京R不動産」を共同運営する不動産企画会社SPEACのメンバーがおくる、心あるオーナーさんのための、ビジネス目線のコラムシリーズ。

著者紹介

林 厚見(東京R不動産/SPEAC inc.)

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