3/29「FUTABA ALTER:NATIVE」というカンファレンスが、福島県双葉町で開催されます。自治体としては最後のスタートという形で2022年秋から帰還が始まった双葉町は、福島福島第一原子力発電所があった町。稀有な状況に置かることとなったこの場所は、この先どこへ向かうのか。この地でこそできる、先回りした未来とは……
復興のラストランナー、双葉町
この町に関わり始めたきっかけは、帰還者向け住宅の計画に関して、双葉町に関わる先輩から意見を求められたことだった。5年前に初めて双葉町を訪れた時は、隣の浪江町に子どもの頃、何度か遊びにいった記憶が蘇った。まだ未来へのビジョンや道筋が見えているとはいえないなか、外モノの自分にも“希望の方向“を考えてみることはできるのではないかと思った。
その後、僕らはこの場所の“これから“をどう考えていくのか、という問いをさまざまな人に投げかけていった。そしてコロナ禍の中で行われた地元の人たちの話し合いを通じて出てきた思いや意見を踏まえながら、この町の今後の“考え方”のタタキとして“仮ビジョン“をつくった。そこでは「2050年の目線から考える」「ハードの復興から心の復興へ/祭りから復活する」「疎の空間、余白の可能性と価値」「誰かの志ありきの投資へ」「新しい”住民“の定義」などといった考え方が含まれている。
それらは、これまでの一般的な復興論とは違う考え方に基づいたものといえる。だがこの町に住んでいた人や関わっていく意思を持っている人たちにとっての、自然で本質的な願いであり、この場所だからこその現実性を持ちうる考え方でもあるように思えたのだ。
双葉町ではさまざまな努力とアクションが進んでいる。行政の尽力はもちろんのこと、勇気ある民間事業者たちが尊い意志を持ってこの地に事業拠点をつくったり、もともと縁のなかった若者たちが移り住んで地元の方々と連携してツーリズムやアーティストインレジデンスの活動をしたりもしている。ずっとこの地で家族で食堂をやっていた高崎丈さんは、東京で店を構えつつ海外に日本酒文化を伝える活動と並行して、双葉で自然栽培の畑を始めた。
どこから考えるのか?
外モノの僕らは、何をどこから考えて動くことができるのだろうか。かつて6,000人が住んでいたこの町に住んでいる人は今まだ200人に満たない。以前に住んでいた人たちはその半分。インフラ復興や工場誘致などは進んできたが、仕事や店はまだまだ少ない。しかしだからといって、ただ余白を埋めていくことが目的になるとは思えない。住民が増えないと自治体として“自立“は見えないかもしれないが、経済的な負担という意味では、国まで含めて考えていくべき状況もある。お金のつじつまや短期的な課題だけから考えず、本質から考えるべきだろう。
まずはこの町で生きてきた人たちが故郷に戻れる環境や機会があるべきだ。そして誇りを取り戻し、記憶を継承する必要がある。だが焦って短期的に動くのではなく、数十年先の未来への視点から考えるべきだろう。“中央“に依存するのでなく、地域に根付いた誰かの意思がベースになっていくのがいい。日本全体があの災害から学び、新たな価値観を獲得するためにも、全ての人がここを訪れるべきだろう。この大いなる“余白”を、過去と同じやり方で埋めていくべきではない。活性化とか成長といった言葉を安易にあてはめるべきではない……
そんなさまざまなベキ論を意識がありつつ、現実的な希望の道筋とはどんなものだろう。
あたらしい都市計画
ここは、ある意味“ゼロベース”で未来をつくっていける稀有な場所であるからこそ、日本の今までの社会システムすら前提とせず、一周先回りして先駆的な地域社会のかたちを生み出せるかもしれない。ここでしかできない方法で、この場所に希望を灯すこと、新たな意味や物語を生み出すこと、被災された方々にとっても、はたまた日本の全ての人々にとっても、この地への誇りを生み出すことができないだろうか?
そうした価値観で前にゆっくり進んでいくことが、無理のない自然な意志や関係性、なりわい、そして世界へのメッセージも生み出していくのではないかと思っている。議論していく中で、「これは、新しい都市計画のパラダイムをつくりだすということなのではないか?」という考えがチームに浮かんだ。これまでとは異なる、地域づくりの理想像、世界観、秩序のつくり方を描いていけないだろうか?と。そして今回は、そのためのきっかけとなる「場」を設定しようと考えた。
ここから僕らのチームは「風景」や「関わりの基盤」のようなものを考えていこうとしている。そこでは「ここでしかできないこと」を可視化していけたらと思っている。そこから小さなアクションや意思が生まれていくのではないかと思うのだ。
僕自身は「この場所ならではの共同作業」ができないだろうか? と考えている。できれば叙情的なものがいい。誰か一人が“デザイン”するものでない方がいい。例えば一つのタタキ案として、この広い余白を含む町の全体を「庭」にしていくことをイメージする。ヒントは「動いている庭」「第三風景」のコンセプトで知られる修景家、造園家のジル・クレマン。彼は「荒地こそ私たちが必要とする新しいページではないか」と言い、自然な変化に対峙しながら手を入れていく方法を実践している。双葉町にも多くの人が訪れ、少しずつ種を蒔き、手を入れながら、都市とは異なる感覚を楽しみながら共有していくといい。コンクリートの世界とは真逆の、自然の生態系や地面の下を水の流れに気づくような風景がつくられていくのだ。そしてこの地で飲み語り寝泊まりできるようなバラックの空間も、時間をかけて色んな人が関わってつくっていく……そんなことから新たな関わりや意思が生まれていかないだろうか。その先に真に持続的で先駆的な地域社会が見えてこないだろうか……と思ったりしている。
そして3/29に双葉町で行われるカンファレンスでは、そんな背景をふまえつつ、これからの希望の方向性と、具体的なアクションについて話すことになる。
最初のセッションでは「50年の火種 ~ 真の持続地域、先端的地域社会とは~ 」というタイトルで双葉町の未来像について語る。次の「自治のオルタナティブを想像する」では、新たな住民制度や自治の概念・方法を。そして最後のセッション「新たな可能性を秘めた都市計画の可能性とリアリティ」では、それらに向かっていくための実験的なアクションや、これからの都市計画や公共事業のあり方までを議論する。
まだ訪れたことのない人も、一度は行ってみるべき場所だと思う。
今まで想像したことのない、大事な気づきが得られると思う。
この機会に双葉町の今を見て、一緒に話しませんか?
イベント概要
日時:2025年3月29日(土)11:30~19:00
場所:福島県双葉町町民グラウンド(予定) JR常磐線双葉駅 徒歩5分
定員:約100名
参加費:無料
ウェブサイト:FUTABA ALTER:NATIVE
主催:TEAM ヒラクフタバ
共催:双葉町
協力:ふたばプロジェクト
参加方法:事前予約制
以下リンク先にてお申し込みください
参加登録フォーム(googleフォーム)

カンファレンス内容
Session 1:50年の火種 ~ 真の持続地域、先端的地域社会とは~
・養老孟司(医学者/東京大学名誉教授)
・林千晶(事業家/株式会社Q0)
・林厚見(株式会社スピーク)
他に類を見ない状況に置かれている双葉町だからこそ、これまでの常識を離れ、焦ることなく真の持続的地域、この先の先端的な地域社会を構想したい。一体それはどのような世界観、社会像だろうか。どのようなパースペクティブで捉え、どんなイニシアチブで何から動いていくのだろうか。この場所の持つ意味や可能性を問いつつ、未来像を描くセッション。
Interval:双葉町で活動する地元出身者や移住者からのお話
Session 2:自治のオルタナティブを想像する
・いとうせいこう(作家・クリエーター)
・松村圭一郎(文化人類学者/岡山大学准教授)
・若林恵(編集者/株式会社黒鳥社)
・江良慶介(kurkku alternative)
”自治”を自分たちの実感をベースに自分たちの手で暮らしや未来を選び組み立てていくこと、と定義すると、いま地域で行われている意思決定はそこからほど遠い。資本主義やトップダウン型のシステムへの依存構造の中で物事は自分たちから離れて進んでいく。自治の本質的価値と現代との分断をどう乗り越えていけるのか、双葉町の街並みの中で探っていくセッション。
Session 3:新たな可能性を秘めた都市計画の可能性とリアリティ
・SIDE CORE(アーティスト)
・津川恵理(建築家/ALTEMY)
・水野佑(法律家/シティライツ法律事務所)
・佐々木晶二(都市計画家/元国土交通省)
・嶋田洋平(らいおん建築事務所)
誤解を恐れずに言えば、双葉町はこれまでにない可能性を秘めた都市と言えるのではないだろうか。 人口減少による縮退が地域の課題として論じられるが、もしかしたら双葉町は20世紀の開発的都市計画そのものを全面的に見直して、縮充へと向かう新たな地域づくりのモデルとしての可能性があるのではないかと思う。 双葉町から日本全体の縮退に対する解決策を探っていく。
Live Performance:環ROY
お問い合わせ先:info@hiraku-futaba.jp(担当:森下泰地)